カリストのデザイナーはパチンコ・パチスロ遊技機の演出を手掛けています。メインの業務となるのは映像・画像作成です。ホールで遊技される方はご存じだと思いますが、近年のパチンコの映像は映画に引けをとらないほどクオリティーが向上しています。私たちは最前線でその進化を支えていると自負しています。

私がデザイナーとして特にこだわっているのが「気持ち良さ」と「信憑性」です。パチンコはお金を消費しながら遊ぶものだからこそ、金銭面以外の不快感はあってはならないというのが私の持論です。遊技者は同じ映像・画像を何度も繰り返し目にしますが、それでも不快に感じない絵や動きを私は気持ち良さと呼んでいます。気持ち良い表現にたどり着くために最後の最後まで試打を行い、1ドット、1フレーム単位の微調整を繰り返します。

一方の「信憑性」とは、「図柄」と呼ばれる数字が揃いそうだと遊技者に印象づけること。昔のアナログの回転体はシンプルで、この数字が揃うんだろうというイメージがしやすかったはず。ところが、今の数字はCGで描かれるため、統一感のない表現も見受けられます。例えば、図柄の変動中に数字の質感が変わってしまうと、うわべだけの絵に感じられ、揃うイメージが沸きません。私も図柄の変動中は数字ごとに演出を施しますが、一定の法則があって動いているように感じてもらうために、必ず統一感を持たせるようにしています。

気持ちよさと信憑性をさらに高めていけば、たとえ当たりが来ないときでも、おもしろいと感じてもらえるはずです。パチンコ遊技機の開発に携わって7年目になりますが、そんな理想の遊技機を実現できるという思いは以前よりも強くなっています。

カリスト入社前、私は主に映像業界でデザイナーをしていました。ゲーム業界に身を置いたこともあります。パチンコ遊技機のソフトウエアには映像やゲームなどさまざまなクリエイティブの要素が盛り込まれていて、いろいろな業界経験が生かせます。

例えば「スーパーリーチ」と呼ばれる当たりに近づく演出は、パチンコ遊技における山場の一つです。背景に映像が流れ、その上に乗った図柄の数字が割れたり、凍ったり、溶けたりしながら、時に図柄と映像がシンクロします。この演出では決められた時間の中でカメラ割りやエフェクトを駆使して高揚感を創出するため、映像業界のノウハウが生きてきます。

ゲーム業界の経験を生かせるのは統一感とオリジナリティのバランスを考えるときです。先ほど「信憑性」の話で統一感にこだわっていると述べましたが、一方で個々の数字の出し方にオリジナリティも持たせています。ゲームも全体の世界観を確立するために統一すべき表現があり、シーンごとにオリジナリティも持たせます。また、画面に表示すべき要素が多い点もパチンコ遊技機とゲームは似ていて、インターフェイス設計でもゲーム業界で培ったノウハウを生かすことができます。

一方で、パチンコ業界でしか身に付けることができないノウハウも多々あります。気持ち良さや信憑性を創出する演出法もその一例です。さらにデータ設計の知識も身に付きます。データ設計の緻密さはパチンコ業界ならではのもので、プランナーやプログラマーと密接にやり取りをして、ようやく一つの絵を表示できるというイメージです。

パチンコ遊技機のソフトウエア開発を企画から実装まで一貫して担えるのが他社にはないカリストの大きな強みです。通常はメーカーの絵コンテや仕様書に沿って、A社が映像制作、B社が組み込みといったように別々の会社が作業をします。演出を絵コンテレベルから提案して、最後まで作り込むことができるカリストのデザイナーは非常に恵まれた環境にあると言えます。

提案して作り込むというサイクルを真摯に繰り返したことで、カリストはメーカーから一定の信頼を得ることができました。特に演出の部分では、任せていただける範囲が広く、自分が注目していた映像表現や、こだわって提案した演出法を実現できることが大きなやりがいになっています。

そもそもパチンコは遊技機が変わっても基本的な構成要素はあまり変わらないため、メーカー側も斬新な提案を求めているところもあり、その期待に応えるのが私たちの使命でもあります。

将来的には、版権に頼らないオリジナル企画でモンスター級のヒットタイトルを作ることが目標です。版権も無尽蔵ではないため、業界全体としても今後オリジナル企画の比重が増すかもしれません。ホールで自分たちが作った遊技機でたくさんのお客さんが遊んでいるのを見ると、震えるほど感動します。その光景をオリジナルの遊技機で見てみたいです。